健康と人
4年前の夏、2ケ月間の入院生活を送った。
それまで病気や怪我にほとんど縁がなかっただけに、まったく予期せぬ出来事であった。
スポーツクラブからの帰り道に意識を失って道端で倒れていた私を、たまたま通りがかった人が見つけて119番通報してくれたと後で聞かされた。
気が付いたのは、救急病院のストレッチャーの上だった。
「あれ、ここは何処だろう」
「なんでこんな所にいるんだろう」
そんなことをぼんやりと考えた記憶がある。
元々血圧がやや高かったのだが、本当にまさかであった。
当初は10日ほどで退院できると言われていたのだが、記憶の回復がもう一つ宜しくないとのことで、秋口まで脳神経病院から出ることが許されなかった。
自分では何の後遺症もないと思っていたが、見舞いに来てくれた人たちから後で聞いた話では、声を揃えて「実は最近、少し異常を感じていた」ということだった。
確かに脳の血管が破れて出血していたのだから。
入院中は毎日、運動療法や言語療法に努めた。
スタッフの皆さんが揃っていい人たちだったという、人の縁にも恵まれていたこともあり、
不思議と不安はなかった。
たまたま同室に知り合いが入院していたというのも幸いだった。
真面目にリハビリに励み、涼しくなってからやっと退院できた。
今振り返ってみると、人生初の入院生活は得ることが大きかった。
まず健康の有難み。
そして人の温かさ。
おそらく神様がこの2つを教えてくれるため、こういった状況を用意してくれたのだと後からつくづく思えた。
人生に無駄なことはない。
身に起こったことには、必ず何かの意味があると確信した。
あれ以来、白衣のナースの衣装を着た大曽根の回春エステにはまってしまったことも、何か意味があるのだと無理やり納得しようとしている私がいる。
今だから白状するが、病院のパソコン周りに人がいない時を狙って、こっそりと風俗記事をチエックしていたことはいい意味での励みであった。
私を支えていたのは、退院したら錦のエステ店に行くぞという一念だった。